喫茶店の扉の鍵を掛け、私は二階へと急ぐ。もちろん行き先は陸さんの部屋。


ソッと中を覗くと、チビちゃんに添い寝していた陸さんが顔を上げた。


「太一郎さんは帰ったのか?」

「うん」


入口でモジモジしている私を見てクスッと笑った陸さんが「こっち、来いよ……」と右手を差し出す。


「陸さん……」


彼の長い指を自分の指に絡め暫く無言で見つめ合う。でも、次の瞬間、強い力で引き寄せられ陸さんの胸の中にスッポリ納まっていた。


「さっきは弱音を吐いて悪かった。俺は諦めてないから……明日、大阪で絶対予約取ってくるから心配すんな」


優しい声……けど、疲れてるのか、力のない声……


「陸さん、無理しないで下さい。オッパイが発売出来なくても陸さんの気持ちだけでもう十分です」


陸さんが傍に居てくれるなら、例え"魅惑のおっぱい"が発売中止になってもかまわない。


私は本気でそう思った。


でも……


「バカなこと言うな!お前があんなに頑張って商品化したモノを簡単に発売中止に出来るか!」


痛みを感じるほど強く私の肩を掴み声を荒げる。


「私の為に陸さんが辛い思いするのイヤです……」

「大丈夫だ。大阪がダメでも、まだ手はある」

「それって、もう一つの条件のこと言ってるんですか?」


彼の片方の眉がピクリと動き、微かに動揺したように見えた。


「……そうだ。だからお前は安心て待ってろ」


なんだか凄く嫌な予感がする。


「もう一つの条件ってなんなの?もしかして、とんでもないことなんじゃあ……」


不安になり問い詰めるが、陸さんは何も言わず唇で私の言葉を遮った。


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