LAST SMILE ~声を聞かせてよ~
俺の知らない彼女






地下にある桐生さんの部屋に向かう。


階段を一歩ずつ降りていくと、
部屋の明かりがついていた。



桐生さん、いんのかな?


仕事中だったら邪魔しちゃ悪いよな。


俺は恐る恐るドアに手をかけ、
静かにそのドアを開けた。




「あ?」


部屋の中は電気がついていて、
音楽が微かに流れていた。



だけど……。



「寝てる……?」


桐生さんは机の上に伏せて眠っていた。


仕事中に疲れて眠ってしまったのか、
桐生さんの手にはペンが握られていて、


机の上にはずらりと文字が並んだ書類が散らばっていた。




俺はその部屋にゆっくりと入った。



寝てんのか。
ちょうどいいじゃん。



早くこれを元に戻して帰ろう。




そう思ったんだけど……。








「この曲……」


微かに小音量で流れているその音楽は、
俺が聴いたことのないような、ギターソロだった。


歌詞も何もない、
ただギターの音だけがメロディーを奏でる。



俺はその音楽に聴き入ってしまった。



そこらで聴くギターの音とは何かが違う、


目を閉じたらそのまま眠れそうな、そんな響きの音がした。




桐生さんって、やっぱしバンドが好きなのかな?



なんか、全然そんな感じがしないんだけど。



こういうびしっとした人ってさ、
もっとこう……なんつぅのかな?



音楽っつったらクラシックとか?


洋楽とか?


あんましジャカジャカしたのは
似合わない感じがするんだよな。




「すんません。失礼しまーす」


そっと声をかけると、
CDを元の棚に戻そうとした。






そんな時だったんだ。
















「行かないで……」















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