あなたのために。-光と影-

忌々しい声





玄関から外に出た。




そこは長い廊下になっていて、どっちに行けば出口に近いのか全く分からない。




連れてこられた時には覚えておいたのに、すっかり忘れてしまった。




どうしよう、もしどこかで組員の人に会ってしまったらすぐに戻されて奴に報告するだろう。




そして奴は私に赤い跡を増やす。




黒いワイシャツの襟をギュッと掴んだ。
ワイシャツからは奴の嫌な匂いがする。




早く動かないと、奴が仕事から帰ってくる。




とにかくここから早く出て、環に会わなければならない。




環には言いたいことがたくさんあるのだから。




私は取り敢えず左に向かって歩き出した。




するとすぐに私を失望させる声が聞こえてきた。




「…おや、黒百合さんではありませんか?」



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