とろける恋のヴィブラート
「また連絡入れる。今はとりあえず早く行け」


 御堂が顎でしゃくって奏を促した。


「じゃあ、失礼します」


「あぁ」


 バタンとドアが閉められると、車内がしんと静まり返った。


「ふん……あいつに何かあったかなんて、俺には関係ない」


 御堂は、コツコツと奏のヒールの音が遠ざかるまでずっと一点を見つめていた――。
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