「こんばんは」
声をかけると、ゆっくりとこちらに首をめぐらせたあと少しの間が空いた。

「……ああ、川原さん」
「どうしたんですか、寒いのにこんなところで」

「うん。ちょっと、桜を見てたんだ」
「桜ですか。枝しかないですけど……」

冬枯れしている桜は、数えるほどしか葉もついていないし。
ついているその数少ない葉も、枯れてしまって今にも全部落ちてしまいそうだった。

「ちょっと、昔のことを思い出していたんだ……」

そういうと、桜の木へ視線を向ける。

ダウンを着ているとはいえ、こんな冬の夜に枯れた桜の観賞とは、はて?

煙草を吸う横顔を眺めていたら、不意に訊ねられる。

「イメチェン?」

桜を見たまま、望月さんが訊いて来る。

「え?」
「髪の毛」
「あ、ああ。はい」

変わった自分を、一番に望月さんに見てもらえるなんて光栄すぎる。
でも、ちょっと照れくさいかな。

もじもじとしていると、桜から私へ視線を移した。

「よく似合ってる」

ズキューンッ

キラリンと白い歯を見せるその笑顔とセリフに、私は胸を打ち抜かれましたよ。
嬉しすぎて昇天しそうです。

「デートでもすんの?」
「えっ。デートなんて。そんな相手はいません」

私がデートをするのは、望月さんとって決まっているんですから。