桜まち 


挙動不審の櫂君を従えて、会場のある六本木へと向かった。
高級感バリバリのホテルに着けば、ホテルマンに丁寧に案内されて恐縮至極だ。

会社が借りた会場のクロークにコートを預けて中に入ると、すでに半数以上の社員が集まっていた。
みんなちゃんと仕事してからきたんだろうか? と疑いたくなるくらいの素早い集まり方だった。
会社行事とはいえ、みんな楽しみなんだろうな。

設置されたテーブルには、目にも鮮やかな料理の品々が並び。
私の大好きなお酒もたくさん並んでいた。
それを見ただけでも、テンションが上がるというもの。

「そういえば、今年のビンゴの景品。一等は、なんだろうね?」
「去年は、確かやたら大きな高性能のマッサージチェアーでしたよね」
「それって、なんか。貰ってもちょっと困る系だよね」

苦笑いを浮かべると、櫂君も笑う。

「僕が当たったのがホットプレートで、まだ良かったのかもしれないです」

景品の話をしながら開始時間を待っていると、甘ったるい声の女の子が近づいてきた。

「藤本くーん」

ピンク色のフレアスカートをひらつかせてそばに来たのは、櫂君と同期の女の子だった。
そばにいた私をすっとかわして櫂君のそばに行くと、甘えるようにデレデレし始める。

今日も素敵だね。とか。
そのネクタイ似合ってる。とか。
一緒の席に座ろう。とか。
とにかく色々言って、そばに擦り寄っているのだ。

そうしているうちに、他の女の子たちも寄って来て、私は案の定というようにはじき出される。
櫂君は、わらわらと寄ってくる女の子たちの円陣の中に紛れてしまって、ほぼ姿が見えなくなってしまった。

「イギリスの掃除機より吸引力凄いじゃん」

呆れて零し、その輪の中に入っていけないというか。
入る気なんてサラサラないけれど、なんだかのけ者扱いされたようで、私はとっても気分が悪くなってしまった。

「なんだかんだ言っても、櫂君だって女の子たちに囲まれてしまえば、悪い気はしないってことよね」

はじき出されてしまった先輩のことなんて、眼中になしですか?

「勝手に女の子たちとパーティー楽しんでくださいな。私は、一人後ろの方でお酒に溺れていますから」

聞こえもしないのに僻みっぽく言って溜息を零し、私は一人その場を離れた。


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