桜まち 


「布団が汚れるし、行儀が悪いですよ。ちゃんとここに座って食べてくださいね」

テーブルにはあったかいお茶も用意されていて、勝手知ったる我が家のように、櫂君が甲斐甲斐しく私のお世話をしてくれる。

私、介護老人みたいだな。
手厚い介護、よろしくお願いします。

「風邪薬は何処ですか? それとも、病院いきますか? 土曜の午後でもやっているところ、きっとあると思うので」
「じゃあ、食べたら病院に行く」

解りました。食欲があってよかったです。と笑顔の櫂君が病院を検索してくれる。
至れり尽くせりです。

「昨日、あんな寒いベランダになんて出ちゃったからじゃないですか?」

パーティー会場で櫂君と言い合いになった時のことだ。

確かに、あそこは寒かったな。
上着なしだったから、一気に体温奪われていったもん。

だけど、それよりも。

「昨日の夜、帰ってから望月さんとラーメン食べに行ったのもあるかも。すっごく寒かったもん。ついでに足も痛かったし」

痛みを思い出したら、自然と顔がしかめ面になる。

「ちょっ、ちょっと待ってください。なんですか、それ?」
「え? だから、マンションに戻ったら小腹の空いた望月さんが丁度出てきて、私も何も食べてなくてお腹が空いてたから。あ、ほら。前に櫂君と食べに行ったラーメン屋さん。あそこへ一緒に食べに行ったの。けど、帰りも寒くってさー。風邪引くかと思ったよ……って、引いてるし」

一人突っ込みをして笑っていると、櫂君が眼を見開いて私を見ていた。

「今の笑うところなんだけど」

少し苦しくなってきた呼吸と、胸の辺りの気持ち悪さに深く息を漏らしながら櫂君に言っても、ピクリとも頬を緩めてくれない。


< 139 / 199 >

この作品をシェア

pagetop