桜まち 


「なんか他に欲しい物があったり、具合悪くてしんどくなったら呼んでよ。なんなら、壁叩いてくれていいから」

望月さんは、壁を叩くジェスチャーをする。

「それか。イヤじゃなかったら、俺の番号教えるし」

番号?
スマホ?

知りたいっ。

番号、知りたいっ。

望月さんの番号を教えてもらえるなんて、棚から牡丹餅だよ。

今度は、ブンブンと首を縦に振る。
その仕草に望月さんは、可笑しそうに俯いて笑ってしまった。

「川原さんて、ホントおもしろいよね。見てて飽きないよ」

クスクスと笑いながら、望月さんはスマホを取り出した。

「bumpできる?」
「はい」

二人のスマホをコツンと合わせれば、相手のデータが現れる。

望月さんのデータ、ゲットーーーー!

歓喜に震えそうなのを堪える私。

「なんかあったら連絡して。じゃあ、お大事に」
「ありがとうございました」

ぺこりとお辞儀をして望月さんを見送ったあとには、一人で大喜びですよ。
スマホを握り締めて、さっき堪えた歓喜の声を上げてしまいます。

「うっひょーーー」

スマホに頬ずり。
すりすり。


「ここのところ連続して、嬉しいこと続きだよぉ。こんなに幸せでいいのかな」

にひひひひ

ニタニタしながら布団にもぐりこむと、早速望月さんからメールが届いた。

【 みかん食べて、ビタミン摂ったら直ぐに良くなるよ。また、ラーメン行こうな 】

「了解ですぅ。ビタミン取り巻くって、早く元気になりますよぉ。で、望月さんとラーメンにGOです」

むふふふ

ん?

気持ちの悪い笑いを零していると、メッセージに続きがあることに気がついた。
ずっと下にスクロールしていくと。

【 化粧してなくても、あんまり変わらないな 】

「え?」

それって、どういう意味?
化粧してもしてなくても、たいしたことのない顔ってことか?

いやいや。
ポジティブに取ってみよう。

すっピンでも可愛い! とか?

うん。
こっちの方がいいよ。

なんて、勝手な解釈をして浮かれるのでした。


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