そうだ。

「久しぶりに、肩もんで上げるよ」
「なんだい急に。気持ち悪いねぇ」

孫の好意に気持ち悪いはないでしょうよ。

と言いたいところだけれど、久しぶりに来て喧嘩腰というのもいただけない。

もとより。
気持ち悪いといいながらも、お祖母ちゃんは笑顔なのだ。
照れ隠しだね。
お母さんがいない分の孝行をさせてもらうよ、お祖母ちゃん。

グイグイッとツボだと思われる箇所に親指の腹を押し当てて揉んでいくと、いい気持ちだねぇ。とお祖母ちゃんが少し手を休めて目を閉じた。

「お母さんも、こうやってお祖母ちゃんの肩を揉んでくれたことってあった?」
「あったよ。菜穂子の揉み方は、咲子に似ているかもしれないねぇ」

お祖母ちゃんは、昔を思い出すみたいにお母さんの名前を口に出し、目を瞑ったまま気持ちよさそうにしている。

私の母。
お祖母ちゃんにしてみれば大切な一人娘のことだけれど。
その娘を亡くしたのに、お祖母ちゃんは普段からなんでもないことのように明るく暮らしている。

でも、それは。
唯一残された孫の前だけなんだろうなって、私は勝手に想像していた。

だって。
お祖父ちゃんも亡くなって、娘も亡くなって。
唯一残された孫の前で、しくしくメソメソして見せるなんて、辛い時代を超えてきたお祖母ちゃんには、きっとありえないことだろうから。