おばさんは結婚して子供もいるけれど、成人して今は一緒に暮らしていない。
旦那さんは、もうずっと単身赴任で福岡に行ったっきり。
だからおばさんは、あのマンションで一人暮らし同然の生活を送っている。

寂しくないのかな? と思い。
以前、旦那さんのいる福岡へ行かないの? と訊ねたことがあったんだけど、知らない土地で一人で旦那の帰りを待ってるくらいなら、こっちで気楽に一人身生活を送るほうがいいといっていた。

そんなものなのかなぁ。
せっかく好きで結婚した相手なのに、年月がたつと離れても平気になっちゃうんだね。
そう考えると、なんだかちょっぴり寂しい気がしたんだ。

翔君におでんの入った袋を貰ったおばさんだけれど、松葉杖ついては持ち歩けないでしょ。
おつゆこぼれちゃうよ。

「おばさん、マンションまで私が持ってあげるよ」
「あら、本当? ありがとねぇ。菜穂ちゃんは、昔から本当に優しい子よね」

ホクホクとした笑顔を見せ、おばさんはたんまりと買い込んだおでんの入った袋を私に差し出した。

私が袋を受け取りおばさんと一緒に出口へ向かうと、偶然にも入口付近に並んでいる雑誌売り場に望月さんがいてこちらを見ていた。

「あ……」

思わず声が出てしまう。
そして、つけて来たわけじゃないです。という弁解の言葉を言いそうになったけれど、私は口を閉ざした。
きっと、信じてもらえないだろうから。

悲しい現実を背負いつつ会釈だけをして、私はおばさんとともにコンビニを後にした。

「さっきの人は、知り合い?」

大通りの横断歩道を、松葉杖のペースに合わせながら少しゆっくり目に渡っていると、おばさんが訊ねてきた。

「知り合いというか。最近私の隣に越してきた人です」
「あら、そうなの。知らなかったわ。随分なイケメンじゃないの。もしかして菜穂ちゃん、狙ってる?」

イタズラに笑って訊いて来られても、図星の上に既に撃沈している私は何も言えません。

「おばさんがあと一〇歳若かったらアタックしているくらいのいい男だったじゃなーい。おばさん、これでも昔は凄くもててたのよぉ」

おばさんは、高らかに笑っている。

いやいや、おばさん。
あと一〇歳若くても駄目でしょ。
更に二〇歳は若返らないと。

苦笑いをしている私の隣で、その後もおばさんはあーだこーだと昔の杵柄を話していたけれど、望月さんのことが気になり話の内容は右から左だった。