獣耳彼氏



実は女子空手部員は私と京子しかいない。


ということで、のんびりと京子とおしゃべりしながら制服へと着替えた。


道場から出ると辺りはすっかり真っ暗で。


着替えるのに時間がかかったことが伺える。


輝く月と星が夜空を彩っている。



「お!ようやく来たな、水嶋!」


「…っげ、部長…」



道場の壁に誰かが凭れているなと思ったら、それは部長で思わず眉を顰めてしまった。


不定期にこうやって、帰り際に待ち伏せとかされて。


もう、部長には懲り懲り。


本当、止めて欲しい。



「一緒に帰るぞ!」


「け、結構です。それじゃ!京子、後はよろしく!」



部長の言葉を遮り、私は捕まらないように素早く駆け出した。


背後では私を呼ぶ部長の声と、それを止めてくれている京子の声が微かに聞こえた。


こういうときばかりは、京子に感謝。


ちゃんと、部長を宥めてくれるから。


部長に関しては京子に何回も助けられてる。


しばらく走って、部長に見つからないだろうところまで来て、ようやく足を緩めた。



「はぁ…毎度毎度、部長も懲りないな…」



ここまで拒絶されても諦めない心は尊敬にも値するが、そんなことは私からしたら迷惑千万。


どうしたら諦めてくれるのやら。


考えても一切答えは出てこない。



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