最悪から最愛へ
酔っていても意識がしっかりしているようで、自分の言葉で気分を害されたのかと焦る。


「紺野チーフ、後輩をいじめちゃダメですよ」


同じく赤い顔した佐和子は、グラスを佐藤の前に出して、注ぐようにと催促する。主婦である佐和子は久しぶりの飲み会参加だからか、浮かれていて飲む量が増えていく一方だ。


「いじめてないよ。ちょっとかわいがっただけ。最近、やっと佐藤くんのことが分かってきてね。なかなかいじりがいがあるなと思ったのよ」


「そうそう!佐藤さん、いじられキャラですよね!」


近くで話を聞いていた佐藤よりも年下の社員にまで言われて、佐藤は赤い顔をますます赤くした。


「ええ?俺、そういうキャラ?…あ、でも。そういえば、前の店でもからかわれたかも」


「うふふ~。佐藤くんって、愛嬌あるよねー」


「いや、愛嬌あると言われても…一応これでも男ですし」


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