恋のはじまりは曖昧で

昨日、田中主任から電話とメールがあった。
私は、家に帰り簡単に食事を済ませると、早々とお風呂に入った。
起きていても田中主任と町村さんのことばかり考えてしまうので、速攻でベッドに入った。
なかなか寝付けなかったけど無理やり目を閉じた。

着信などに気づいたのは今朝だったので、出れなかった。
何も応答がない私のために、田中主任はメールで要件を伝えてくれていたんだ。

【今日は本当にごめん。メールとかで話す内容じゃないから直接会って話をしたい。彼女とは話が終わったらすぐに別れて、今は会社に戻ってる。紗彩、心配かけてごめんな】

ちゃんと田中主任と話がしたかったな。
寝てしまった自分を悔やんだけど、こうして気にかけて連絡してくれたことが嬉しかった。

その田中主任は、今日は朝から倉井さんと日帰りの出張だ。

昨日は浅村くんと出かけたり、さらに出張の準備とかもあって忙しかったのに町村さんに呼び出されて……。
会社に戻ったってことは遅くまで残業したんだろう。
そんなことを思いながらエレベーターで一階に降りた。
受付の久山さんのところに行くと、エントランスの奥にある来客用のスペースで待ってもらっていると教えてくれた。

「お客様はあちらにいらっしゃいます」

「分かりました。ありがとうございます」

来客スペースに向かうと、マスク姿の町村さんがいた。
私に気づくと、立ち上がった。
< 247 / 270 >

この作品をシェア

pagetop