恋のはじまりは曖昧で

「いや、俺は楽しみすぎて前の日はグッスリ寝るタイプ」

「へぇ、そうだったんだ」

寝れないのも、グッスリ寝るのも、どちらも浅村くんらしいなと笑ってしまった。

「よし、仕事やるか」

そう言って気合を入れなおした浅村くんは図面を手に取った。

社員旅行は、大型バスに乗って温泉のあるリゾートホテルに宿泊する。
リゾートホテルに泊まったことがないので、どんな感じなのかすごく気になっている。
もう、この時点で私も社員旅行を楽しみにしているのかも、と思ってしまった。

一泊二日の予定で一日目の夜には宴会がある。
二日目は午前中に海鮮市場に行く予定だ。
水揚げされたばかりの海産物などの販売をしていて、お土産に地方発送もしているらしい。

市場のそばにあるお店で昼食をとるんだけど、名物は海鮮丼。
それをみんな食べるみたいで、私はどうしようかと悩んでいる。
なぜなら、私は生の魚介類が苦手。
親から『美味しいから食べてみなよ』の言葉にお刺身を食べてみたら、気持ち悪くなった。
それ以来、生の魚介類を避けるようになった。

大人になって、お刺身を目にする機会が増えている。
私はそれを口にすることが出来ないので、周りの人から『お刺身食べれないなんてもったいないね』と言われることが多い。

今回もどうにか海鮮丼を回避し、美味しく料理が食べれることを望んでいる。
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