私はどこまでも走った。
周囲を歩く人たちが変な顔で見る。
自分の会社の近くまで来て、ようやく立ち止まった。
背を建物に預け、息を整える。

怖かった。
他人に暴力を振るわれそうになった。
ものすごく怖かった。


寛に会いたい。


そう強く思った。
寛に会って、なんでもいいから話をして、安心したい。

でも、きっと寛は安田といる。
当たり前だ。婚約者なんだから。

だけど、私にはこんな時、寛の他に頼る腕を知らないんだよ。


まだ震える手でスマホを取り出す。

すると、ラインのメッセージが入っている。

寛だ。



『琴 会いたい』


電話をすることに迷いなんかなかった。