恋の神様はどこにいる?
☆巫女と神職と結婚式

今日の私の衣装は、青摺模様の松鶴をあしらった本装束。初めて舞いを習うとき見せてもらった、あの素敵な衣装だ。

志貴のお母さんにそれを着付けてもらうと、ポンと背中を叩かれた。

「小町ちゃん、何今から緊張しちゃってるの。いつも通りの小町ちゃんでいいのよ。それに、今日は志貴が儀式を執り行うからね。ドンと大船に乗ったつもりでいなさい

「え? そうなんですか?」

「あら? 志貴、何も言ってなかった?」

そんなこと、ひとことも言ってくれなかった。それならそうと、教えてくれればよかったのに。

今日は出雲さんの結婚式だから、志貴や千里さんは参列者として参加すると思っていた。だから少し心細くて、緊張もしていたんだけど。

志貴が一緒だと思うだけで、こんなにも気の持ちようが違うなんて。

「志貴と小町ちゃんの結婚式は、いつ頃になるのかしら?」

「はい!? いやいや、まだ全然。そんな話は、と言うか、付き合い始めたのもついさっきで……」

「もう小町ちゃんったら、動揺しちゃって。ホント可愛いんだから。小町ちゃん?」

「はい」

「志貴はなかなか大変な子だけど、必ずあなたを幸せにしてくれるはず。だから志貴のことよろしくね」

まさかお母さんから、そんな言葉がもらえると思ってなくて。お母さんの志貴への思いに胸が熱くなり、感情が高ぶってしまう。それは目から涙という形で現れてしまい。

「まあまあ、どうしましょう。せっかく綺麗にお化粧したのに、泣いたら駄目じゃないの」

「すみません。でも、お母さんの気持ちが嬉しくて……」

小さなお母さんの身体に抱きつくと、しばらくそこで泣かせてもらった。



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