旦那様がお部屋に戻られてから、奥様と少しおしゃべりをして……
私にも一緒に食べようと言って下さったけど、母が作って待ってるはずだから、遠慮して……
「家で食べますので……」って言ったら、奥様は、急に慌てられて、遅くまでごめんって謝られた。
どうしたんだろうと思ったら、私が結婚してて家族を待たせてると勘違いされてたようなので、咄嗟に、夕食の準備はいつも母がしてくれてるから問題ないと話してしまった。
どうして素直に言わなかったんだろう…



私は独身で、母と二人で暮らしてる…って。



そんな人は世の中にいくらでもいる。
何も恥ずかしいことじゃない。
そんなことはわかってるけど、奥様が私を既婚者と間違えたから、つい言いそびれて……



(……違う…そうじゃない……)



堤さんのご家族があまりに幸せそうだから……
そう、適うはずなんてないけど、現実の自分を認めたくなかったんだと思う。
母親と小さなアパート暮らしで、アラフォーになってもまだ独身で、きっと一生結婚も出来ないこんな私を、認めたくなかったんだ……
奥様も、私なんかにそんな関心を寄せるはずもないし、黙っていたら、私は共働きをしてる近所の奥さんと思ってもらえる。
……そう思っててほしかった。
だから……



おかしなもんだと思った。
私は、自分がどの程度の人間かはわかってるつもりだ。
愚かな人間だってことも十分わかってる。
それなのに、そういう所では変に見栄を張ってしまう。



(あぁ、そうか……)



そういうところが私の馬鹿で愚かなところなんだ。
智君にも、私は貧乏で生活していくだけで精一杯ってもっとはっきり言ってたら、お金を騙し取られることだってなかっただろうに……
そしたら、付き合いももっと短くて済んだはずで、今みたいに何年も引きずることなんてなかっただろうに……

自分の馬鹿さ加減に、あらためてうんざりした。

この作品のキーワード
トラウマ  転機  アラフォー  復活  地味  切ない  誤解  ピュア  大人の恋  じれじれ 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。