幸せの花が咲く町で
「大変だ、もうこんな時間!」

堤さんは柱の時計を見て、慌てた様子でそう言われた。
時計の針はもう11時半を指していた。



「大丈夫です。
今夜は友達とオールナイトでカラオケをしてくるって言って出てきましたから。」

「どうしてそんなことを?」

「今日は、とことん堤さんとお話したかったから……」

おかしなことを言ってしまっただろうか?
まるで最初からこちらに泊まるつもりで来てたみたいなことを言ってしまった。
実際、そうだったのだけど、夏美さん達がいらっしゃらないから、堤さんのことが心配になって来たとはいいにくい。



「……そうですか。
じゃあ、話しましょう。
お互いのことをとことん語り合いましょう。」

幸い、堤さんは、私が気にしていたことを穿り返されることはなく、私はほっと胸を撫で下ろした。



私達は遅い夜明けが来るまで、ずっと話し続けた。
お互いの子供の頃のこと、堤さんのお仕事のこと、実は、今の家はかなり散らかっていて、けっこう酷い状況だということ……
話題は尽きなかった。
私は、堤さんのことを教えてもらうのも、私のことを聞いてもらうのも、そのどちらもが嬉しくて、声が枯れる程、お互いに話し合った。
< 284 / 308 >

この作品をシェア

pagetop