『佐田孝志 中山ゆうみとお泊まり愛』


朝のワイドショーで、そのニュースが目に飛び込んで来た。


光恵は持っていたコーヒーのカップをテーブルに置くと、ひたすらに深く呼吸をくりかえす。じっとテレビの報道に見入った。


ゆうみのマンションに入った孝志は、朝まで出てこなかった。日付はほんの二週間前。加えて、昨日はホテルの駐車場で、ストーカーに襲われたゆうみを、身を呈して救ったらしい。


「熱愛は間違いないと思います」
芸能記者がしゃべる。


「前々から、佐田さんのマンションに中山さんが出入りしているという噂はあったんですよ。もうすぐ同じ舞台を踏みますしね」


光恵は力なく椅子に座った。肘をついて、昨日、孝志が座っていたラグのあたりを、ぼんやりと見つめる。


昨日、うちを出た後、ゆうみさんに会いにいったんだ。


心臓をえぐり取られる、という表現は、こういうときに使う。不思議と涙は出ない。怒りもない。悲しいけれど、どこか納得している自分がいる。


孝志はやはり、昔の孝志ではないのだ。
わたしに、昔を思い出させる、そんな演技をしてみせただけで。
再会したら懐かしく、甘酸っぱい気持ちを思い出して、わたしを誘った。


たぶん、そんなところだろう。


光恵は自分の唇にふれる。


あんなキス。
なんの経験もなくできるわけない。
彼はとっくに、大人の男になってたんだ。