一年が過ぎた。


光恵はアパートのダイニングテーブルに頬をついて、ぼんやりとテレビを見ていた。光恵は椅子の上に胡座をかいて、缶ビールを一口飲む。残暑のこもった空気の中に、エアコンからの冷たい風が渦をつくっていて、光恵のお風呂上がりの前髪を乾かした。


孝志を見ない日はなかった。
テレビ、映画、雑誌、ネットでも。


あっという間に彼は有名俳優の仲間入りをした。自分の知り合いが、テレビに出ている。正直ピンとこなかった。光恵の知っている孝志は、もうどこにもいない。演技を評価され、立て続けに仕事をしている、有名人がいるってだけだ。


光恵は目の前のノートパソコンに目をやる。新しい作品を書かなくてはならないのに、いっこうにアイディアが出てこない。光恵は再びビールを口にした。


劇団の観客数は増加した。それは孝志の出身劇団だ、という理由からだ。もちろん孝志は出ていないが、ファンは興味本位で見にくる。劇団のファンになってくれるかどうかは、これからが勝負なのだ。しばらく再演ばかりしていたが、このあたりで新しい劇団を見せようと、三池は光恵に作品を依頼した。光恵はこみ上げる不安を飲み込み頷いたが、結局何も書けていない。