とかしてもいないぼさぼさの髪を帽子の下に隠し、黒斑のだて眼鏡をかける。七分袖の白いシャツの上からでも、細く引き締まった身体が想像できた。濃紺のデニムに白に赤いラインが入ったスニーカーを履いて、孝志は「ミツ、早く行こう」と声をかけた。


残暑も薄れ、木々の間を流れる風が心地よい。午後三時の日差しがは、ゆっくりと身体を温める。


明日はプレミア試写会の日だ。
結局、孝志は残り一週間で二キロ弱痩せた。痩せたと言ってもガリガリではない。適度に筋肉がつき、顎のラインはシャープ。最初肉に埋もれていた目は、余分な水が抜けたようにすっきりとしていた。心を決めた孝志は、やり遂げたのだ。


「駅前でコーヒー飲もうよ」
孝志が光恵に話しかけた。


「いいよ」
「ガムシロとミルク、入れたいなあ」
「ブラックにしなよ」
「でも、俺、もうオッケーじゃない?」
「油断は禁物だから」


光恵はそう、諭した。


土曜日のせいか、いつになく駅前のロータリーは混んでいた。光恵は孝志と一緒に、カフェチェーン店へと入る。


「コーヒーを二つお願いします」
光恵はカップを載せたトレイを持って、孝志の待つ端の席へと向かった。