それはほんのひと時の夢幻のような。


俺達二人だけしか居なかった世界に明かりが灯されたとき、それは容易く壊れてしまった。


そんな、夢のようなひと時。


「あっ、ご、ごめんなさい!」


ぱ、と部屋の電気が点いた瞬間、沢森は我に返ったように真っ赤になり、俺から勢い良く離れた。


それを名残惜しく思いながら、「別に」と口から出るのは単調なセリフ。


……俺は結構役得だったし、なんて言えねえし。


「そ、そのプリントよろしくお願いします!」

「あ、おい……!」


呼び止めた時には時すでに遅し。


沢森は脱兎の如く、逃げ帰ってしまっていた。


一人取り残された室内で、はー、としゃがみこむ。


「あー……やべぇ」


よく耐えた俺の理性。褒めたたえてやろう。




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