psi 力ある者 愛の行方 


「んじゃ、また明日な。鈍感ちゃん」

だから、鈍感じゃないってばっ。

私は、その言葉に反論する。

「鈍感じゃないよ」

「そっか。じゃあ……未知。また明日」
「え? ……未知って」

いつも惣領としか呼ばれないのに、行きなり未知だなんて言うからトクンとまた心臓が反応した。

「だって、未知だろ?」

泉は、当たり前の顔をして言ってくる。

「そうだけど――――」
「じゃあ、いいじゃん」

泉は、満面の笑みを浮かべて私を見ている。

いいじゃんて、そんな勝手な。
いいなんてひと言も言っていないよ。

なのに、口に出して反論ができない。

「未知。また明日」

もう一度ニコリと笑うと、背を向け歩き出す。

ゆっくりと遠ざかる後ろ姿に、しばらくしてから小さくぼやいた。

「何よ。人の事勝手に呼び捨てにして」

既に聞こえるはずもないほど遠ざかった背中へと投げかけた言葉が、宙に浮いてしまう。

結局、痣がどうこうよりも、泉のペースに振り回されただけの一日だった――――。


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