psi 力ある者 愛の行方 


父の後ろから来るだろう上司のために「いらっしゃいませ」という言葉を用意しながら私は構えた。

きっと、油ギドギドの顔でスーツを着た中年親父……っと、失礼。

とても仕事が出来そうで。
ビシッとスーツに身を包んだ上司のお方たちが現れるのだろう、と少しの緊張を胸に迎えたのだが、父のあとに入ってきたのは、一人の女性だった。

年は、多分父と同じくらい?

そして、さらにその後に続いて一人の男の子が入ってきた。

多分、私と同じくらい?

……あれ?
会社の上司じゃないの?

緊張していたのが裏切られ、思わず拍子抜けした顔になってしまう。
ここに泉が居たら、間抜けな顔してるって言われそうなくらい気の抜けた顔をしているだろう。

ていうか、誰?

疑問を表情に出し父を見ると、少し照れたような顔をしている。

何、その顔。

私は、訝しむ。
そんな私へ、父が説明を始めた。

「こちら、神谷詩織さん。そして、息子さんの陸君」

父が紹介をすると、その母子の母親が柔らかい笑顔で微笑みながら私に向かって挨拶をする。

「こんばんは、未知ちゃん。神谷詩織です」
「こんばんは」

よくわからないまま、私も挨拶を返した。

それから、母親の後ろにつまらなそうな顔して立っている自分の息子を前へと促し紹介した。

「息子の陸です」

陸と呼ばれ紹介された息子は、チラリと私の顔を見た後、無表情のままひとこと言う。

「どーも」

何の感情も篭らない。
寧ろ、だるそうな感じの挨拶に、母親の詩織さんは困った顔をしている。

私は、こんばんは。ととりあえず、その愛想の欠片もない陸という彼に頭を下げた。


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