ーClearー

2 ~ミハライブキ~




 ミハライブキ……。

「イブキって、呼んでも良いかな?」

「うん。じゃあ、私も君の事ハルカって呼んで良い?」

「良いよ。――ねえ、イブキ」

「何?ハルカ」

 僕は疑問をイブキにぶつける。

「イブキはさ、僕の事怖くないの?見えてないんでしょ?」

「見えてないけど、人間でしょ?」

「それはそうだけど」

「私はね、ハルカの独り言とかが良い人そうだったから、話し掛けたの」

 意外な事実を知り、僕は間抜けにも口を半開きにした。

 数秒後、それに気付き、慌てて口を閉じる。

「ハルカこそ、僕の事怖くないの?」

「怖かったら、とっくに逃げてる」

 若干、声に笑いを含ませると、イブキの澄んだ笑い声がこの廃墟に響いた。

「それもそうだね」

「すんなり肯定されると、それはそれで悲しいけど」

「ごめんね。で、でも、なんかツボに入っちゃって……」

 ますます音量の増す笑い声に、苦笑していると。

 突然イブキが笑いやめた。
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