キミと帰る道
◇4 失顔症の存在
【◇4 失顔症の存在】





(すず)





人は誰もが個性を持っている。
ひとりひとり顔も性格も十人十色。





だからこそ人の見分け方だって違う。
初対面の人のどこから見るか。
その人のことをどうやって覚えるか。





だけどそれを見分けられない人もいる。






顔の全体像が見分けられない人。
そんな人は顔のパーツで見分けたりする。





私たちが見えている世界が、たとえば逆さまに見えていたら。
人の顔も逆さまに見えていると、誰が誰だかわからなくなる。





顔のパーツは認識できても。
それが組み合わさった顔全体は…覚えられない。





———それが、…〝失顔症〟。









「あら、パソコンなんかいじっちゃって…なに調べてるの?」





少し霞む目を、パソコンの画面から後ろから覗き込んで来たママに向ける。





「〝失顔症〟って知ってる?」




「失顔症……。
聞いたことはあるけど、よくわからないわ」




「…そうだよね。
ありがとう」





藤谷くんと本当の〝初めまして〟から1週間。
毎日毎日、藤谷くんと話すたびに同じことを繰り返してる。





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