第一部 出会い編

【憂鬱なソネット】







伯母さんがある日突然うちに訪ねて来て、こんなことを言い出した。




「ねえ、あやめちゃんも、もう三十路目前でしょ?


私の職場の上司の息子さん、紹介するから、会ってみなさい」




もちろん、あたしは即座にお断りした。



いまどきお見合いなんて、時代錯誤もいいとこだ。


合コンだって苦手なのに、お見合いなんてもってのほか。




恥ずかしすぎるし。




でも、伯母さんの押しは非常に強かった。




「別に会っても何か損するわけじゃないんだし」



「はぁ、まあ確かにそうですけど」



「減るもんでもないでしょ?」



「そりゃあねぇ」



「ほら、騙されたと思って!」



「…………」




騙されたらたまったもんじゃない、と思ったけど、いちおう口には出さずに我慢した。




あたしがどう断ろうかと頭を悩ませていると、お母さんが口をはさんできた。




「あやめ、会ってみればいいじゃない」




ーーーそう、お母さんは、義理の姉である伯母さんが怖いのだ。



伯母さんは少しヒステリー気味なところがあって。


一度気分を害してしまうと、何ヶ月、何年と、ギスギスし続ける羽目になる。




とにかく、父の親族と穏便にしていたいお母さんは、伯母さんとの関係性を良好に保つため、娘のあたしを生け贄に捧げたってわけ。





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