第二部 再会編

【憂鬱なエチュード】








「ーーーめさん!」





仕事帰りの道。



突然、誰かから名前を呼ばれた気がして、あたしは銀杏並木の真ん中で立ち止まった。




空耳かな、と思いながら振り返ると。






「あやめさーん! こっち!」





「えっ、あんた………」






予想だにしなかった男の登場に、あたしは目を見張る。




それを知ってか知らずか、男は心底うれしそうな顔で、





「久しぶり」





と笑った。




あたしは思わず、






「久しぶりって………なんなの今更!?」





と怒鳴ってしまった。




男は「ん?」と首を傾げてから、





「会えてよかった!」





と、こともなげに言う。





顔面を覆い隠すボサボサの長髪に無精髭、ボロボロに擦り切れた穴だらけの黒ずんだ服。



山男かと見まごう容姿でにこにこと手を振ってくる男を、あたしは呆然と見つめた。





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