イージーラブじゃ愛せない


「駄目ですよ先輩~。相手イヤがってんじゃないっスか」


人目も多いし、なるべく波風を立てないように気をつける。面倒な事になって一番恥ずかしい思いをするのは女の胡桃だから。


角を立てないようにヘラリとした笑顔で言ってみたものの

「は?人聞きの悪いこと言うなよ」

「そーそー。俺たち遊ぶ約束してただけだよ。お前なに勘違いしてんの?」

向こうも表面だけ取り繕った笑顔で明らかに『邪魔すんな』と威嚇してくる。


本当にこの人たちヤバイな。後で俺が殴られるぐらいなら構わないけどさ。胡桃、捕まっちゃったら洒落になんないよ。


なのに、その張本人ときたら先輩達の向こうから俺をきっつーく睨んでる。

『あんたにはカンケー無いでしょ』って、長い睫毛のキリッとした瞳が俺に『あっち行け』って、言ってる。


ああもう本当に。

こういう性格だから、俺、胡桃のこと大好きなんだよ。


『関わるな』とか『しゃしゃるな』とか一生懸命俺に伝えてくる眼差しの奥には、『私の問題にあんたを巻き込みたくない』って不器用な優しさが滲み出ている。本人は隠してるつもりでも。

素直に『助けて』って言えない、そのキっツい瞳。たまんなく好き。
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