願望クエスト
愛那
9月に入ったというのにむんわりと蒸し暑い日だった。

原愛那(はら あいな)の死体は

腹を裂かれ小腸がだらんと飛び出した状態で

自宅マンションの屋上で発見された。

彼女の遺体のまわりには、

内臓やら肉片やらが散乱していた。

その肉のかたまりは、細い雨にうたれて

不気味に光っていた。


愛那は実完高校1年B組の生徒だった。

愛那は最近彼氏ができたといって

あんなに喜んでいたはずだった…

警察は愛那の死を自殺と伝えた。

自分でお腹を引き裂いて内臓を引っ張り出すなんて

ありえない。

普通の人間がそんなことをできるはずがない。

それに、幸せそうだった愛那が自分で死ぬわけない。



愛那と同じクラスだった御崎鮎(みさきあゆ)は彼女が死んだ理由がわからないでいた。

目は教室の窓の方を向いていたが

どこを見ているというわけではなかった。

トントン…



ひっ…!

鮎は息が止まるかと思った。

誰かが鮎の肩をたたいたからだ。
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