グレープフルーツを食べなさい
 あれから母はICUから一般病棟に戻ることが出来た。

 それでも症状は日々確実に悪化している。私が会いに行っても、最近の母はほとんどベッドに臥せったままだ。

 日に日に弱っていく母を放って置くことはできなかった。僅かな時間でも側にいてあげたかった。

 それなのに母の病状と比例するかのように、仕事は忙しさを増していく。

 私は思い通りにいかない毎日に苛立っていた。

「あっ!」

 そしてこうやって、普段の私ならやらないような単純なミスをしたりもする。


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