全部、抱きしめて
大瀬良さんのきっぱりと言い切ってくれるのが嬉しい。

変に勘ぐらないで最初から本人に聞けば良かった。

「あー。ここ数日、由里子に振り回されて疲れたな。挙句の果てにつき合えないとか言われた時は、どうしようかと思ったよ」

「振り回したつもりはないですけど」

「当の本人は自覚なしかよ」

大瀬良さんは、わざとらしくため息をついたあと、言葉を続けた。

「とにかく潤に限らず、他の男をご飯誘ったり、うかうかと車に乗せてもらったりするなよ。いいな? 」

「だったら、大瀬さんもですよ」

「オレ?」

意味が分からないと言うような感じで首を傾げた。

「会社内や取り引き先の女性から誘われたりしてませんか?」

「なくはないかな」
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