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「──大丈夫?」



自分に向けられていると思われるその言葉に、わたしはゆるゆると、うつむかせていた顔を上げる。

そして目に映ったのは、切ったばかりみたいな真っ黒い短髪に、黒縁メガネと色白な肌。

思っていたよりもすぐそばで、自分と同じくらいの年頃の男の人が、じっとこちらを見下ろしていた。



「……ああ、やっぱり、佐久真さんだ」



スーツ姿のその男性は、わたしの顔を覗き込むようにして軽く首を傾ける。


……わたしの名前、知ってる?

ていうかこの人、なんか見覚え、あるような……。



「……あの……」

「ああごめん、しゃべんなくていいよ。すっごい顔色悪いけど、貧血?」



言いながらその人は、駅の片隅でうずくまるわたしに寄り添うように、隣りへとしゃがみこんだ。

遠慮がちに肩を抱いて、背中をさすってくれる。……一見とっつきにくそうなのに、すごく親切な人だ。