降り注ぐのは、君への手紙



「なあ、もし佐助が転生していたんなら、この鏡で渡すところみせられたんじゃねぇの?」


生者に対して郵便を送るときは、それは自然現象として降り注ぐ。
それは直ぐにでき、郵便局に設置された鏡から覗くことが出来るはずだ。
俺の時がまさにそうだったから、忘れやしない。


「タケさんもなかなか学習してきましたね。佐助さんは転生などしていませんよ。だから、手紙はお預かりしたんです」

「じゃあどこにいるんだ?」

「天道でもないんですから、地獄に決まっているでしょう」


ヨミはあっさりと言い、先ほどいじっていたファイルを俺に見せた。


「そもそも自殺をしたらそれだけで地獄に落とされるんですよ。加えて霊魂になっても人を巻き込もうとした罪が加算され、彼はまだ地獄で修行中です」

「なんでそればーさんに教えてやらないんだ?」

「聞いても仕方ないでしょう。彼女は人生を全うし、秤にかければ天道へいけるような善行をしたのです。今更重石になるようなことは知らなくてもいいはずだ」

「でも」

「大丈夫ですよ。この手紙で彼は少し救われます」

「え?」

「騙した人間が彼を恨んでいないというのは、彼の罪を計る上では情状酌量の余地があるということです。彼に届ける前に、閻魔大王にご報告申し上げ再審にかけていただくことになるでしょう。その際に渡すことになるかもしれません」

「再審って……裁判みたいなもんか?」

「そうです。あの世も案外この世と変わらないんですよ。
どうです? そろそろ諦めて死んでしまっては。タケさんならここで正式に雇ってもいいです。お茶くみの有用性も先ほどので分かったでしょう」

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