~Special Short Story~
「ったく、災難だった」
麻央の家に向かう車内。警察官から開放された俺は、膨れっ面をしながら運転をしているのに、隣に座る彼女はまだ笑っていた。
「ヤバイよ。もうなお最高」
「ふざけんな。もうこんなキザなこと二度とするか」
あの警察官め、ムードを台無しにしやがって。危うく不審者のレッテルを貼られるとこだったし。
信号か赤になる。同時に、俺はあることを思い出した。
「そこの笑ってる麻央さん」
「ふふっ、なに?」
差し出したのは、リボンがついた白の正方形の小さな箱。
「これ、開けるよ?」
「どうぞ」
麻央の手に出されたのは、ネックレス。小さな2つのハートがリングのように組まれていて、その裏には俺と麻央の名前入り。
「どう?気に入っ……」
俺の彼女は、クールで美人できっと泣き虫だ。
信号が青になっているにも構わず、大きな瞳に涙をためる麻央の後頭部を引き寄せ、キスをした。
麻央の喜ぶ顔が見れるなら何でもしてやるけど、もう、キザなことは今日と……プロポーズの時で限界だな。
☆。.:*・゜1度だけのキザなこと*END