詐欺師の恋
不意打ち



12月28日水曜日、仕事納めの日でございます。



オフィスのあちらこちらでも、社内のどこでも、終わりなんだなーっていう空気が流れている気がする。




「あー、肩凝った…」




「おばさんくさい」




全ての業務をなんとか終わらせて、右肩をトントンと叩くと、憲子が白い目で私を見た。




「うるさいなぁ。これくらいいいでしょ。掃除とかもなんだかんだあって、大変だったし…」




「そうやって老けてくのよ。今年は、実家帰るの?」




「…まだ迷い中」




毎年一応顔を見せに帰るようにはしている。


けど、億劫でもある。



どーせ、お兄ちゃんもお姉ちゃんも帰ってこないだろうし。





「そうだよね、休みあんまないし、カレんとこ、行きたいわよね」





「ちっ、違うってば」





「ずっぼしー♪」




にやにやと指差す憲子に、私は思い切り手を振って否定する。





「なんか、仕事忙しいみたいだし。夜昼逆転してるし。中々予定合わないんだよね…」





口に出して言ってみると、さらに落ち込む。


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