あの日、私と彼を会わせてくれるきっかけになったのは、美鈴の勇気のおかげなんだから。


「そっち行ってもいい?」


小さく襖が開いて、美鈴の眼が私を見つめていた。
静かに私が頷くと、美鈴は枕と布団を持って縁側に座る。
美鈴も夜空を見上げると、落ちて来そうな月に吸い込まれるように見入る。


「美鈴ってさ、お姉ちゃんと同じく『みれい』とも読めるんだよ」

そう小さく言う。

「同じ読みなのに、お姉ちゃんはお父さんとお母さんから一字ずつ貰って、跡取りだと生まれた時から大事にされて、かたや私は男の子じゃなかったから、跡取りにもなれない女の子は持て囃されるだけ。ずっと居場所がなくて、しがみつかなきゃ誰からも見て貰えなくて、――楽しくなかったもん」

そう語る美鈴は、まだ十八になったばかり。その小さな肩は、まだ頼りなげなのにしっかりと月を見上げていた。


「お父さんはいつもお姉ちゃんばかりだった。だから、私は私の為に跡取り候補に立候補したのに、――お姉ちゃんもなりたくなくて辛かったんだね」