【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!

ワナワナと震える母が、私の目の前に来ると手を振り上げた。
ソレを私は避けずに受けきろうとして真っ直ぐに見ていると、扉が開いて腕を捉えられた。

突然のデイビットさんの登場に、母はすとんと落ちるように目を見開く。

妊娠の相手だと理解したようだ。

「何を考えているの! 貴方は鹿取家に恥をかかせるの!」

「恥なんて思っていない! 勝手に今まで決めてきたのはそっちです!私の意見なんて聞かないんだから、――だから私は黙ってただけ。鳴けないみすぼらしい鳥籠の小鳥だっただけ!」

「止めなさい! みっともない姿を春月堂の皆さまに見せないで」

怒りで震える母を見て、人間らしい感情を吐露できるのだと感心してしまった。

私には冷たい視線や、つんつんした口調でしか接してくれなかったから。


「麗子さん、後日ちゃんと挨拶に伺いますから、落ち着いて下さい。皆さま、騒がせてすみません」

デイビットさんが私を背に庇うと深々とお辞儀した。
そして顔を上げると、皆の顔をゆっくり見渡す。

「ですが、私は美麗さんと正式に結婚して、彼女を心から守っていきたいと思っています。彼女を愛しています」

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