こんぺいとう
次の休みの日。
由月は純から借りた写真を持って祖父の家に行った。

由月は写真を見せながら、今のサイパンの状態を二人に話し始めた。
―サイパンは今じゃリゾート地として有名だけど、それでも当時の事を誰も忘れてはいない。数多くの慰霊碑が立てられ、平和しか知らない年代の人達も戦争に触れようとしている―

説明を聞きながら、祖父は写真を捲っていた。
例の写真を見て、祖父の手が止まった。
祖母も写真を見た瞬間、固まった。
二人の目から大粒の涙がこぼれ、体を震わせている。
由月は声がかけられず、ただ黙って二人の様子を見ていた。
しばらくして、祖父が沈黙を破った。
「どうしてこの写真を…?」
由月は説明し始めた。写真に映っている男性の弟の孫とサイパンで知り合ったと…

二人はその言葉を聞いて
「秀次君は生きていたか…良かった…」と再び涙を流した。

その後二人から何も聞く事は出来なかったが、帰り際に祖父が
「今度は純君を連れてきてもらえないか?」と言った。

由月が頷くと、祖父は笑顔を浮かべた。
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