スセリの花冠
込み上げる愛世への想いが溢れ出て、知らず知らずのうちにディアランの瞳に力がこもる。

「ディアラン……」

……アイセ……?

ディアランには視線を落とした愛世が、心なしか表情を硬くしたように思えた。

「ディアラン様、時間です」

「……分かった。すぐ行く」

「行ってらっしゃい、ディアラン。……後でね」

「ああ」

……仕方がない。行かねば。

ディアランは思いきったように踵を返すと、任務へと向かった。

*****

七日後。

式典の間アルファスは大勢の国賓の相手をせねばならず、到底継承記念の催を自由に楽しむ場合では無さそうだった。

「もう七日目なのに……忙しすぎて可哀想ね」

遠くのアルファスを見ながら愛世がディアランにこう言うと、彼はクスリと笑った。

「王とは、そういうものだ」

それでも式典の最終日の午後、ようやくアルファスは自由を手に入れたようで、気の合う仲間に囲まれて宴会を楽しんでいた。

長かった髪を短く切り、精悍な顔立ちがより際立っている。

愛世は思わず両目を細めた。

……なんて楽しそうに笑うのかしら。

それからなんて……眩しいのかしら。

騎馬隊長のディルがアルファスの耳元で何か呟くと、その瞬間弾かれたようにアルファスが笑った。
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