会社の愚痴をもらすために、河野とよく行く居酒屋があった。

店に入ると、訳知り顔の店長は、常連の私たちの姿を見て目を細める。

「いつもの場所でいいかい?」

お絞り片手に笑顔で問われて、二人で頷いた。
引き摺られるように連れてこられた乾君も、私達の後に続く。

いつもの個室に案内されてヒールを脱ぐと、はーっとつい声が漏れてしまった。
長時間ヒールを履いていると、足がパンパンだ。

「三十歳にもなると、体に来るだろ」

私のことをわざと茶化す河野の言葉に、そばにいる乾君が、笑っていいものかどうか、と困った顔をしている。

「どーせなら、豪快に笑い飛ばしてくれると助かるけど」

戸惑い気味の乾君の顔を覗き込むようにして言うと、すっすみません。なんて慌てている。
なんだか、とって食われるみたいな乾君の態度に私は肩をすくめた。

「新人虐めんなよ」

サッサと堀に足を入れて寛ぎ、メニューを見ている河野がまた茶化す。

「これ、虐めになるの? 寧ろ、私が河野に虐められてる気がするけど」
「気のせいだ。というか、虐めじゃなくて、いじりだな」
「そんな訂正要らないから」

わざとらしく憤慨している私の姿に、少し満足げな河野。

まったくもー。