「行くか」


私と稜は、屋敷の仰々しい扉の前に立つ。

稜はネクタイを締め直すと、覚悟を決めて呼び鈴を押した。

私は緊張で稜の手をギュッと握る。

「大丈夫だ。心配するな」

稜は私を安心させるよう微笑み掛ける。珍しく優しい素振りに思わずジンとしてしまった。

「駄目ならお得意の家出があるじゃないか」

… やっぱり一言余計だ。

扉がガチャリと音を立てて開き、ユウキが中から姿を現した。

「燁子!」

鳶色の瞳をまんまるにして私を見つめる。

「ただいまー」

私がえへへ、と笑うとユウキが飛びついてくる。ふんわりと薔薇の香りがした。

「もう、どこいってたんだよ!心配したんだから」

「ごめんね、ユウキ」

「体調は?大丈夫?」

ユウキは私の頬を撫でながら心配そうに覗き込む。

「心配には及びません」稜はすかさず、私とユウキの間に割って入ってきた。

「此方は…?」ユウキが尋ねる。

「葛城家の前任の管理人で田中です」

「後任の江藤です。初めまして」

ユウキはキラッキラのスマイルで稜の手を取り両手で握手する。

稜はピシリと固まった。

ユウキと私の関係についての誤解は完璧解けた事だろう。

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