「私は飲んでなかった」

「朱里ってほんと真面目だよね」

「真面目じゃないって」

思わず杏子にムッとした。『真面目』と言われることは『融通がきかない』『面白みがない』と言われているような気がした。

『俺そんなに真面目じゃないよ』

中山の言葉が思い出された。
きっと彼も同じように感じて朱里に対して怒ったかもしれない。

「まぁ大学2年だってまだ未成年の可能性があるって失念してたのも失敗だね」

「うん…」

「でもそんな理由ならすぐ仲直りできると思うよ」

「あとね、私が早くお店を出たくて、お金を全部払ったことも怒ってた」

「男の人って奢られるの好きじゃないみたいだし。いくら向こうが学生でもね」

「何が悪かったのか全然分かんない…」

「なんかさ、聞いてると大した悩みじゃないよ」

「杏ちゃん酷い」

「いや、ごめん。でも付き合いたての初々しさが羨ましい」

「そうかな…」

「うん。きっとすぐ元通りだから」

朱里はそれ以上何も言わなかった。

私が真面目すぎるのだろうか…

朱里はあの日を何度も何度も思い返した。

『俺のことまだ子供扱いしてるんだよ』

中山の言葉が刺さる。
朱里が支払いをしたことがいけなかったのか、お酒を飲んじゃだめとうるさく言ったことがいけなかったのか。
毎日欠かさず中山と連絡を取っていたが、それが無くなるとこんなにも寂しく感じるとは思っていなかった。

ぼんやりとしているうちに車はアサカグリーン社の駐車場に止まった。






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