朱里が見ていた瑛太が全てではないのだから、まだ付き合い始めたばかりの僅かな時間で勝手に失望されたくない。
悲しかったのと同時に朱里に対して怒りが湧き

「俺そんなに真面目じゃないよ」

と言い放った。

今度は朱里が悲しそうな顔をした。
そんな顔をしないでほしかった。瑛太もこの状況に戸惑っていた。逃げてしまいたかった。





「今日は遅いし、駅まで送ります」

瑛太は駅まで歩き出した。
すると後ろから朱里が無言でついてくる。
来るときは手を繋いだ道も、帰りは会話すらせず離れて歩いた。

「それじゃあ気をつけて…」

改札の前で朱里に言った。ろくに顔も見ることができない。

「うん…じゃあね」

「おやすみなさい」

朱里は改札を抜けてホームへ歩いて行った。
瑛太はすぐに改札から離れて家まで歩き出す。

朱里の姿をこれ以上見られない。
自分のカッコ悪い姿をこれ以上見られたくない。
またあの失望した目で見られたら立ち直れない。

原因が酒だなんて笑えない。酒は二十歳になってからなんて、頭が固すぎじゃないか?

気遣いのできる大人の女性だと思った。初めはそこに惚れたのだ。
けれど今は朱里の真面目さが憎かった。
年齢も立場も考え方も、瑛太とはまるで違う。

朱里は今何を考えているのだろう。
自分と付き合ったことを後悔していたらどうしようか。

瑛太は不安で堪らない。

最初は楽しく食事をしていたはずなのに…

恥ずかしくて、情けなくて、怒りで泣きそうになるのを堪えて歩いた。





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