Sugar&Milk
「食べきれる?」
「食べられなかったら明日の朝朱里さんと食べたいです」
「え?」
俺の言葉に驚いて朱里さんが立ち止まる。顔を赤くしながら俺は朱里さんを振り返った。
「だめですか? この後俺んちでケーキ食べて、朝起きてもまた一緒に食べたいです……」
「それって……今夜は瑛太くんの家に泊まるって解釈してもいいのかな?」
「はい……」
俺はこの後一晩朱里さんと過ごすつもりでいた。そろそろ本当に恋人だって言える段階に進みたいって思っていた。
「そういうことを踏まえて、よかったら俺んち来ませんか?」
朱里さんの瞳が揺れる。夜に男の家に行くということ、それがどういう展開になるのか想像できないほど朱里さんは子供じゃない。もし困らせているとしたら俺も困る。でも言ってしまったらもう引き返せない。
少し考えてから朱里さんは小さく頷く。
「よしっ!」
俺が大袈裟なほどに喜ぶと朱里さんの顔も赤くなる。
「瑛太くんのその何でも思ったこと言う癖、よくないよ……」
そう言われても気持ちを抑えたくない。好きなものは好きで一緒にしたいことがあればしたいって言わないと後悔するって学んだから。
「朱里さんが照れてるの見るの面白いから言っちゃう」
「酷いなー」
朱里さんは俺に対して何をするにも緊張しているようだ。まだ学生なのを気にしているのかもしれない。だからこそ早く深く繋がりたいって焦ってしまう。
ケーキを買うと俺の家に向かう。朱里さんは手をぎゅっと握ってきたから、俺も同じ力で握り返した。
「どうぞ」
ドアを開けて朱里さんを部屋に入れた。
1Kの小さい部屋は、元々今夜朱里さんを連れてくるつもりだったから丁寧に掃除をしていた。キョロキョロと部屋中見回されて俺の方も緊張してくる。