『店の前で待ち合わせで。今着替えてるんで待っててください』

瑛太からのLINEを確認する。
朱里は店の前で先に着いて待っていた。
22時を過ぎているので店は既にシャッターが下りていた。



しばらく待っていると

「朱里さん、お待たせ」

後ろから聞こえた瑛太の声に振り返った。
そこには笑顔で立つ瑛太と、横にはなぜか相沢が立っていた。

「えっ…と…」

予期せぬ相沢の存在に戸惑う。

「あ、こっちはバイト仲間の相沢です」

瑛太はお互いに初対面だと思っているので、朱里に相沢を紹介した。

「こんばんは。初めまして、相沢といいます」

初対面を装い、もう見慣れた作り笑顔で相沢は朱里に冷たい視線を向けた。

「こん…ばんは」

「今日ラスト作業が一緒だったんです」

「これからデートですか?」

相沢は真っ直ぐ瑛太だけを見て話しかけた。

「そんなとこ」

「じゃあお邪魔な私はさっさと帰ります」

「そんな言い方すんなよ」

「だって早く二人きりになりたいでしょ」

「うるせー」

瑛太と相沢の遠慮のない会話を聞くのが辛かった。
相沢は自然体な瑛太を引き出せる。それが堪らなく悔しい。

こんな瑛太を朱里は知らない。

「じゃあまた明日ね」

「あ、俺明日休みだよ」

「うっそー、じゃあ私誰とラストだっけ?」

「店長じゃん?」

「マジかー…やだー」

「やだ言うなって」

「あはは」

何がおかしいのか分からないが二人で笑っている。
朱里は自分が透明人間になった気がした。
そこに存在していても、意識されていないかのような。
二人の世界に入れないでいた。

「じゃあ本当にそろそろ帰るね。お疲れ様」

「お疲れー」

「じゃあ失礼します」

相沢は朱里に軽く頭を下げた。

「あ、はい、どうも…お疲れ様です…」

朱里と瑛太に背を向けると、構内を横切り事務所とは反対の階段を下りていった。

「相沢はここが地元なんです。家がここから近いらしいですよ」

「そう…」

朱里の会社もこの駅だ。
それなら今後偶然会ってしまう可能性は十分ある…

「俺らも行きますか」

「うん…」

瑛太と改札を抜け、手を繋いでホームを歩いた。

相沢にそんなつもりはあるのかないのか、楽しいはずの瑛太との時間に水を差された気がした。

こんな感情、抱きたくはないのに…





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