「真面目な朱里さんは、俺のいい加減なとこ気に入らないよね」

「………」

「ほんとの俺は自分勝手で見境なく動いちゃうし、お子様なんです」

朱里は耳も覆いたくなる。
なげやりな物言いをする瑛太が苦手だった。

「朱里さん嫌いでしょ、こんな俺」

「もうやめて!」

朱里は我慢できず叫んだ。

「瑛太くんこそ、相沢さんがいるじゃん」

「は、何で今相沢が出てくるんですか?」

「瑛太くんが好きだからだよ」

「え?」

「瑛太くんに告白するって言ってた。瑛太くんこそ相沢さんが気になってるんじゃないの?」

「何言ってるんですか…相沢は別に…」

「相沢さんならお酒飲んでも私みたいにうるさく言わないだろうし、瑛太くんも気楽に付き合えるんじゃない!?」

「なんでそんなこと…」

「こんな風に卑屈になってる瑛太くんも受け入れてくれるよ!」

「朱里さんは受け入れてくれないの…?」

その言葉に一瞬で失言を後悔した。

「………」

いつもと違う瑛太に困惑する自分を見透かされたようだった。

「やっぱ迷惑だよね…」

瑛太はますます泣きそうな顔をする。
それでも朱里は相沢や今の瑛太に対する不満を発することをやめられない。

「私なんかより相沢さんだったら瑛太くんを不安にさせないよ。だって瑛太くんのこと大好きだからね!」

ついに言ってしまった。

言ってからはっとする。
瑛太は無言で朱里を見ていたが、その目に力がなかった。

「朱里さんは俺のこともう好きじゃないから、不安にさせてもいいと思ってるってこと?」

「違う!」

瑛太は立ち上がった。

「違うよ瑛太くん!」

「帰ります」

「瑛太くん!」

瑛太は玄関まで早足で歩く。

「待って!」

さっさと靴を履くと朱里を振り返りもせず、無言でドアを開け出ていってしまった。

残された朱里は玄関に立ち尽くした。
いくら待っても、瑛太は戻ってこなかった。
朱里の服には酒とタバコの臭いがまだ残っている気がした。



自信を持ってほしかっただけだ。

瑛太に。

朱里自身にも。





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