幸福道
スタート地点
ピピピピピピ…。

ベッドの横の低いランプ台の上で目覚ましが鳴る。

キーの高いベル音は、毎朝6時に鳴り響く。



「ンッ…。」


目覚ましを止めて、制服に着替える。


いつもと同じ、生活パターンに、嫌気を覚えつつ、スカーフを結んだ。




「いただきます。」


テーブルの上に並ぶ、お母さんが作った朝食たちも、毎朝同じ。



カチャカチャ鳴る食器の音。洗い物をするお母さん。





いつもと変わらない朝。



「いってきます。」


早朝7時の冷たい風。


あたしの好きな匂い。






…−−ざわざわ…。



下駄箱独特の匂い。



生徒たちの声。絡まる視線。


あたしの嫌いな光景。




教室に鞄を置いて、美術室へ向かう。




このうるさく気怠い学校の中で、唯一無二の静寂さを誇る教室。



ズラリと並んだ彫刻像。

壁に並ぶ絵画たち。




あたしの好きな光景。






スケッチブックを開き、鉛筆を立てる。




シャッ、シャッ……。



スケッチブックに描いていく、あたしだけの世界。




程よく丸い鉛筆の芯が、あたしの世界を忠実に描き写していく。



−あたしだけの世界を。
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