女子力高めなはずなのに
夜になってお気に入りのボディークリームを塗りながらドラマを見ていたら、突然玄関をドンドンッと叩く音が聞こえた。

ハッとして、一瞬で頭が痺れて凍りつく。

この叩き方……。


……お父さんだ!


あっという間に自分の中で時間がぐるぐる巻き戻っていく。

もう5年くらいは会ってない。

でも、一瞬でお父さんだって分かった。

どうしてここに来たんだろう。

私の所には来ないって約束したのに。


……。

どうしよう。

どうしよう……。

小さく固まったまま、冷汗が背中を伝っていくのを感じる。


「さーくーらーっ、いるんだろ?」


大きな声……。

怖い。

お父さん、絶対にお酒を飲んでる……。


「お父さんだー」


わかってる、お父さんだってこと。

でも、怖くて声が出ない。

体も全然動かない。

まるで子どもの頃に戻ったみたい。

このままじっとしてたら帰ってくれないかな。
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