紅き月
プロローグ
空を見上げた。
どこからが空でどこからが地なのかは分からないが、顔を持ち上げたそこに広がる間違いなく空であろう漆黒の闇を、1人の少年が見上げた。
昼間快晴だったわりに、星ひとつ見当たらない。そんな空が、狂っているようにさえ思えた。
――今宵の空は、狂っている。
ずしりとのしかかるような濃い黒を引き裂いて浮かぶ月。コンパスで描いたのかと思う程に真ん丸な月。
――今宵の空は、狂っている。
そして、少年はつかまえた。
紅く輝く月を。